第71期感想

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第71期作品→http://tanpen.jp/71/


少なかったので比較的短時間で書けた。今回は3回しか見直してないのであとでたくさん書き直したくなりそう。いつものように気付かれないようにこっそり直しておこう。



とてもつまらなかった。ドリフのコントだったら面白かったのに。だとしたら主人公はカトちゃんだろう。坊主はだれだろう。高木ブーが無表情でずっと木魚叩いてる、っていうのがいいかな。カトちゃん坊主(ブー)にからむ→坊主、ムッとしながらも木魚叩き続ける→飽きたカトちゃんが出ていくときにクシャミ→床が傾く、という感じ。
主人公がなぜか妙に坊主をナメてるのもマイナスポイント。なぜに「くそ坊主」呼ばわりか。「根性があるよね」? なにか気に入らないことでもあったのだろうか。まあどうせ深く考えてないんだろうけど。



つながっているようでつながっていないかとおもいきや、やはりつながっているすごい。しかし、もともとの番号順にならべかえるのは面倒なのでやってない。



『自分の気持ちに気付いてしまいたくなくて、それを抑えるのが苦しかった』という奴がその苦しみの原因となっている当人から誘われたらあっさり付いていく上に『私は心のわだかまりがすっと解けていくのを感じた』っておかしくないか? ふつう逆じゃない? よけい苦しくならないかな。



『僕がいることで、彼女を傷つけている』というエピソードがまったく書かれていないので、これじゃあ唯の思い込み激しい君にしか読めない。付き合ってもないのに「おれはきみのために別れる」とか言い出すタイプ。こわい。



いつも思うんだけど黒田さんは指示語使いすぎて文章わけわからなくなってることが多いように思う。
『それは前髪に目が隠されていたのにもかかわらず、睨まれたかのようにそれに視線を絡め捕られてしまっていた』ふたつめの『それ』は必要ないし、受動態の使い方も気に入らない。
風に揺れながらも、それは次第に輪郭がはっきりしてきた』既に読者の意識は「人の形をした何か」にフォーカスが定まっているので敢えて主語(しかも指示語)をつける必要はない。
『それの姿が聞いていたそれだった』ここまでくるとじぶんでもおかしいと思わないといけない。
『薄ら寒い、とても見ていたいとは思えないものなのに、それから目をそらせることすらできなかった』ここも『それから』無くてもだいじょうぶ。
なんだか女装描写が流暢すぎる。『男のくせに女の服を着た奴』なんて言う奴がする描写じゃない。ここだけ雰囲気が違う。



『景』が男らしい名前に思えない。連続ドラマの1話を見てからつぎにいきなり最終話を続けて見たような、おいおいなんかいきなり盛り上がってるぞ、という感じ。
生理が嫌なら男性ホルモンでも飲んだら?みたいな冷たいツッコミをされたら負けだよこういう話は。



オチはまあいいとして(シックスセンス的だが)、そこに至るまでの過程がぶっきらぼうすぎてどうにもこうにも。先に『爺さん、婆さんの二人組の幽霊』とか『母、父、妹、その幽霊たち』と書いちゃう意味がわからない。自分以外の家族が全員死んでいることに気づいて気絶するんだったら、「ふだんの生活のなかでなんとなく薬飲んだら家族みんな消えちゃった! どうして? ギャーじつは幽霊!」という展開じゃないのかふつう。この流れだと「家族の幽霊を消すために薬を飲んだ」と読めなくもないじゃないか。というか最初そういう話かと思った。
あと、『俺は17の時』っていらないでしょう。一日の間に起こった出来事なんだからさ。それとも「気絶した」ことまで含めて回想しているのか?



この乾いた雰囲気とかおれの好き系なはずなんだけれど、なにかが足りない。なにか。一文にこめられた力がたりないのか。ただ流れていく文章に物足りなさを感じているのか。



文体が統一されていないような印象。『かつて森だったくさい』が浮いている。が、しかし、もしかしたらこういう人なのかもしれない。おれもたまに唐突に「今日はつかれたべさ」とか田舎ことば使う。ちょっとちがうか。


10
猿、出てきた! 力が抜けた文章(のように見える)で読んでいるこちらもたのしかった。でもなにより書いている本人がいちばん楽しんでいそうだ。たのしそうでいいなあ。自分のつくったキャラクターを愛しているのだろうなあ。


11
『ばかやろうだなあ』っていいなあ。まねしたい言い回しが多い。


12
『よし!今日こそ…あ、文都!』ってすごいセリフだよなあ。『今日こそ』と『あ、文都!』の間にはいくらかの時間経過があるはずなのに…だけで省略されてしまっている。しかもひとつのセリフの中で! 書きたいことしか書いてやらないぞというおそるべき熱意のあらわれのように思われる。「よし!今日こそ」といきおいよく教室のドアを開けると…みたいなどうでもいい説明は省きます!という。それは別の箇所にもあらわれている。『「はーいお弁当」「うん」「なにどうかした?」』このセリフのつらなり! ここはふつうなら「文都の様子」を挿入すると思うけど、そんなもっさいこと省いて『なにどうかした?』といきおいよくつなげることで、あとはわかるでしょだいたいよくあるかんじで考えといてわたしは先をいそぐから!という若々しさのほとばしりを感じた。そして最後までほとばしり続けた。


13
盛り上がったところでありがちなラスト。これはがっかり。わざとだろうか。


14
これはつまりあれか、主人公には他の人に見えていないもの(つまり世界の真実)が見えているということか。『盲点を刮いだ』というのはそういう意味で合ってるだろうか。しかし、おれは世界の真実なんていうものにまったく興味がない。世界の真実というか、「おれだけが知っている世界の真実」ね。きらいだ。


15
『開拓者精神とかなんとか言うがあたしらにはこの年になってもそれが意味するのは虐殺者、簒奪者、征服者でしかないんだよ』というのも#14で言ったのとおなじ「おれだけが知っている世界の真実」なんだよな。そして思い返してみれば#8もそんな話だった。ただこの作品が他とちがうのは、それがとてもばかばかしいことを承知で書いてあるように思える点だ。『あるといえばあるし無いといえば無い』というのはこの作品の世界観を言い表すとてもいいセリフだ。面白いと思いこんで読めば面白い。わけわからんつまらんと思って読めばつまらない。というのは他のすべてのものごとにもあてはまるのだが。