qbcさんから「小説何読んでンの?」と軽い感じで問われたのだが、はて、と思って考えてみると咄嗟に出てこない。村上春樹を読んだことだけは確かなのだが。果たしておれはどんな小説を読んできたのか。すなわちそれは、「おれの今の文章をかたちづくる礎は何なのか」という問いに他ならない。年も改まったところで、おれはおれのことを振り返り、そしておれについての解題を以下に述べてみる。

言わずもがなである。村上のすごいところは、平易な日本語でおそろしくかっこ良いことを言ってのけることだ。まるで中身のない、ひどく思わせぶりな、それでいてかっこいい文章を書くのだ。村上のやり方はそれまで堅苦しい日本語で書かれた小説しか読んだことのなかった読者に衝撃を与え、「おれにも書けそう」と勘違いする人間たちを量産したのだ。おれもその一人なのだった。

詩もメタもすべて呑み込んだ、まるでこどもの落書きみたいな小説を書く人。小説なんて嘘を書けばいいんだ、嘘をばかばかしくかっこよく書けばいいのだ、ということを思わされた。ばかばかしければばかばかしいほど良いのだ。

説明過多で冗長な文章を書くときのお手本。そして、愛の話ってこんなに楽しいきもちになるんだ、と気付かされた。

舞城とは逆に、短いセンテンスに命を込めるちからづよさを見せつけられた。

杳子の冒頭はいま読み返してもふるえる。情景描写のすさまじさ。

ギボン! 小説とは好きなことを好きなだけ書いていればいいのだ。

ひねくれた文章のおかしみ。

るるぶさんの音楽はエイフェックスツイン〜ワールズエンドガルフレンドに連なるものと認識しているのでそういう意味での「新鮮さ」はないが、文章についてはほかに似たものを知らないのでおれの中で唯一無二である。

  • さやわかさん

ニーツオルグのことを指すのでこの名。小説ではないが、文体において非常に影響を受けた人。好きなものを好きと言い切る姿勢とか。


がんばって思い返してみたが、いまおれの中に息づいてるというとこのあたりかなあと思う。これ以外のものは、読んでも忘れてしまったか、あるいはそもそも読んでない。ものすごく偏っている上にすくない。だれか面白い小説をおしえてください。