第59期感想

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今回はあまり難しいこと考えずに思ったことをそのまま書いた。とても長くなってしまった。暴力的な文章だ。読む人がかわいそう。

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#1 白い部屋。(成多屋さとしさん)
誰も自分の才能から外に出ることはできない、というような話だろうか。だとすると、この話には二重の悲しみがある。まず、自分の才能が真っ白で狭苦しいものであるという悲しみ。それから、そんな侘しい才能を捨てて逃げ出すことすらできないという悲しみ。ラストの『このボタンを押すのを止めてしまうと/何もかもが終わってしまうような気がしたからだ。』という終わり方からも、バッドエンドとまでいかないまでも、どうにもならない焦燥感や絶望感を窺い知ることができる。
ただ、それは本当に悲しいことなのか、とも思う。他の人の「才能の部屋」がどのような形態をしているのか知らないが、もしかしたらもっと狭い人だっているかもしれないし、そもそも部屋自体が無い人だっているはずだ。それに、白いのが嫌なら好きなように塗ればいい。
『その部屋があなたの『才能』なんです。』という『男』の台詞がこの小説のターニングポイントで、これ以降の話の繋げ方によって印象はがらりと変わると思う。個人的な好みで言えば、閉塞した終わりに至らせるよりは、この「才能の部屋」という面白い小道具をもっといじって欲しかった。
で、ここからは作品自体の感想ではないけれど、一文の中でさえ改行をする(しかも一行空ける)のは、端的に言えば読みづらかった。僕の感覚だと一行空けるというのは、内容をすぐには明かさずに読者を焦らせる効果があるものだと思っていて、一行空きが入ればそれなりに間を置いて読み進めていくので、特に改行する必要のない部分で文が切られていると逆にイライラしてくる。何をもったいぶっているんだという気分になる。ただこれは、そういう文体に慣れていないせいで、これから「無意味に改行」が主流になるのだとすれば、だんだんと慣れていかなくてはならないのだろうなあ、と思う。携帯小説世代の人はこんな感じの改行しますもんね。よく知らないけど。

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#2 硝子の虫(森 綾乃さん)
飛蚊症網膜剥離の前兆というより網膜剥離の結果として起こる症状で、飛蚊症があるほどの網膜剥離ならば治療する必要があると思うので、結局この人は網膜剥離ではなかったということだろう。まあ細かい知識はどうでもいいのだが、補足しておくと、飛蚊症があるからといって必ずしも網膜剥離であるというわけではなく、生理的に起こる場合もある。ただ、超ド近眼の人は確かに網膜剥離になり易いので、症状が見られたらただちに眼科医に相談してください。
『四枚の硝子』の話とか、眼底写真の話を見るに、作者の体験を下敷きにして書かれたものなんだろうなあと想像できる。実際、医者の処置ってなんだかよくわからないことを詳しく説明もされないままにされるので、あれこれと連想・妄想しがちである。しかしその連想が巧いかというとそうでもなく、『四枚の硝子』というのもタイトルに結びつけたものだとは思うが、『器具の硝子』よりは『器具のレンズ』と言った方が機能の面においてもそれらしく、そうなると硝子体よりは角膜の方がそれらしい。そもそも硝子体というものはその名前に反して、眼球において光を透過する働きよりは支持組織としての側面の方が強いのだ、とまたどうでもいい知識だった。ただ、こういった連想は、違和感を感じてしまうと少々マイナスポイントになってしまうことは確かだと思う。
それより、最後の段落がとても小説らしいなと思った。もう病院を後にしたというのに、主人公の妄想の中に「医」的なものが巧妙に入り込んでいる。ここに至ってようやく読者は主人公の病院に対する不安感の大きさを、台詞からではなく描写から読み取ることができるのだ。

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#3 ビーアグッドサン(バターウルフさん)
両親がふたりとも死ぬって、主人公は何歳くらいを想定しているのだろうか。喪主をしたくらいで立派と言われるくらいだからせいぜい20代といったところか。これから恋愛もして結婚もしていくだろう歳頃の息子に乗り移るなんて何を考えてるんだろうね。下ネタだけなら苦笑いで済ませることもできるが、下ネタに「親」が絡んでくるとどうにも気まずくなってくる。笑えない。俺の母ちゃん昨日セックスしてたんだぜ! 笑えない。
ペニスに父親、右手に母親、というオチにあまりに焦りすぎてしまったのか、全体的に小説らしさが足りないように思った。『真衣姉ちゃん』というキャラも使い捨て感が強く、ペニスに乗り移った父親との共同生活についても描かれてはいない。親父がムスコになっちゃった!という話だけならうまく笑いに持って行くこともできただろうに。

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#4 忘れられた昼食(公文力さん)
もう連作以外の何者でもなくなってしまってちょっと残念。まったり読むことにする。

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#5 吉右衛門六甲おろしのおはようサンデー(宇加谷 研一郎さん)
朝っぱらからあまーい話。甘くてサムい(玲ちゃん、ワシの太陽も今、おはようサンやで!)話。甘くて冷たいサンデー。もしかして日曜ともかけてる? 実際に面と向かってこんなこと言われたらかなりイラっとくる気がする。文章だと、ぎりぎり「馬鹿らしいなあ」の位置に留まってる。
この冒頭の会話文みたいの、るるるぶさんもよく使う気がするけど、なんか良いですよね。聞き返しを多用するやつ。あまりに好き過ぎるので自分では使いづらいけど。
『剛』の歌に合わせて外の世界が変わっていく(ように見える)のはやられたと思った。これをやりたかったんだよなーあの話は。

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#6 八丁林の探索は(bear's Sonさん)
普通に良い話だったのでびっくりした。ここまで悪者が出てこない話というのもなかなか無いと思う。
『八丁林は小学校の裏にある山で近寄る子供達はいなかった』何故!、『いろいろ想像をたくましくしながら』どういう想像なの!、という風に、面白そうな切れ端を見せているのに深く踏み込んでいないところが惜しいなあと思った。あとブランコの描写とか。とりあえず思いついたことをぴゃーっと書いてみたという感じがした。ただ、『この枝は石を投げるとカンという心地いい音が響く』のような部分は逆にその「書き散らした感」がうまく作用しているとも思った。なんでもない描写がリアリティを帯びることもある。
もうひとつ描写で気になったのは冒頭の『小三の勇太』というところ。『小三』て書く必要あったかな。これがなくても小学生だというのはわかるし、むしろ『小三』と直接書かずに読者に類推させるのが腕の見せ所じゃないかと思った。

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#7 逢魔が時(鳩さん)
敬語とタメ口で会話を書き分けるのって、ちょっとズルいよなと思う。というか若者とおっさん率がとても高い。話も悪についてばかりだし、これまでの作品すべてコンセプト小説なのだろうか。と思ったけど、今回は「石」が出てきてないな。
最初の頃は解釈しようと思っていたけど、最近はもうやめた。たぶん作者の人は「悪とは何か」とか考えてないもん。たぶんこれは枠組み小説なんだよな。枠組みだけ。中身が無いのでそうであってくれないと困る。なのでもっとコテコテに装飾をつけるべきだ。せっかくの車椅子なのに、わだちにはまっただけじゃもったいないでしょう。いっそ車椅子に乗った白髪の老人八人が円形になって主人公を取り囲んでる、とか、裏路地に何故か敷いてあるビロードの絨毯の上を美人秘書に押されながら滑るように車椅子で登場してきてデビルアナライザーをくれるとか。

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#8 医者と死神の微妙な関係(佐々原 海さん)
『暗号を忘れた4桁のナンバーロックを外す』のは確かに難しいけれど時間をかければ確実に開くので比喩として正しくないと思った。「暗号を忘れた3桁のナンバーロックを一発で開ける」だと千分の一の確率になるぞ。まあ比較的どうでもいいことだった。
あと、この少女がほんとに死神だったのかどうか、もっと言えば、これはファンタジーとして読ませたかったのかどうか、もう少し明確だと良かったと思った。たぶん、この子は本当に『自称』死神なのであって普通の女の子だという話なのだろう。そう思って読むと、『だって命って重いし』なんていう台詞が楽しく思える。細かいところで、手術が終わって天気が晴れた(らしい)こともさりげなく織り込まれていて良かった。
もし、本気でこの少女を死神のつもりで書いていたんだとしたら、もっとそれっぽくした方がいい。超デカい鎌と憎らしげなマスコットキャラは必須。で、やはり死神の職務を果たさなかったのでそれなりの罰がなきゃいけない。こどもの魂を取ることをためらった死神ちゃんは死神界から追放されるんだよな。でも主人公はそれを知らない。その後も医者は何度も危機的状況を乗り切って多くの患者の命を救うんだけど、それは死神のおかげなのかもしれないと心のどこかで思う。慢心が生じる。ちょっとしたミスでひとりの患者を死なせてしまう。死神に八つ当たりする「これまでうまくやってきたと思ったのに」余計なことまで言ってしまう「お前が殺したんだろ」。とてもとても心を痛める死神ちゃん。しかし、医者のために「そうよ、当たり前じゃない。わたしは死神なのよ!」患者が死んだのは自分のせいということにしてしまう。ああ死神ちゃんかわいい! まあでも最後には天界からスカウトされて新に天使ちゃんとして生まれ変わるんだよな。トレードマークは「それ絶対飛べないだろ」ってくらい小さい羽と先っちょがハートマークの弓矢で、それでドジっ子のふりして医者に向けて撃ったりするようなドタバタラストがいい。

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#9 シバタ坂のデンジャーゾーン(かんもりさん)
アヌスと言いたいだけの文章だったのだろうか。そこに至るまでの描写がびっくりするほど何もなかったのでびっくりしてしまった。
登場人物の動きをランドセルで表現するのは、なんかしつこいなあと思ってしまったし、逆に二人の位置関係がよくわからなくなったりした。『片方のランドセルの背が、もう一つのランドセルの方に向いていたときに』はお互いに違う方向を向いていたのかと思えば、『片方のランドセルは振り返り』とあるので混乱した。ランドセルが振り返ったら顔はその逆、つまりそっぽを向いたことにならないのか。というかランドセルとたくさん書いてたら意味を消失してしまったよ。なんだランドセルって。

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#10 月はただ静かに(黒田皐月さん)
あー、なんか好きな感じだと思った。情景描写だけで切なさとか虚無感とか読ませるのが好きだ。好きだが、描写が面白く無い。一歩引いた目線で描きたかったのはわかるが、『第二段の破裂を細かくすることで爆竹のような音をさせたもの』なんて書き方はとてもしつこいように思う。
逆に、あまり気取らずに書かれた『道路を彩った自動車のランプは花火よりも明るかったが、その不整然さは花火のようには美しくなかった』というのが一番好きなところだ。でも、これを僕が書いていたら全く逆の結論になっていたと思う。自動車のヘッドライトが切り取る浴衣模様は、きっと予定調和の花火より美いと思う。ここら辺は単に美的感覚の違いなので、良い悪いではない。それに、話の流れ的にも花火が一番美しいとしておいた方がすんなりいく。
それから、狙っていたのかわからないけれど、日暮れとともに昇ってきたのだからこの月は満月だと思うが、それをどこにも書いていないのがいいと思った。月以外の光については過剰なほど饒舌であるのに、月についてはおそろしく寡黙だ。人々は満月であることすら気付いていない、これはそういう物語だった。

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#11 パッキン(壱倉柊さん)
猫の名前の由来は書いておいて名前そのものは書かないとか、猫が何かしそうで何もしないとか、たぶん作者の狙い通りの感じが出ていると思う。全体に漂うニヒルな感じ。しかしいくらニヒルだと言っても、拒否反応を示すような蜘蛛を突然引っ掴んで放り投げるのはいかがなものかと思った。ここはもう少し丁寧に書いた方が良いと思った。
それよりサイト名を見て非常に懐かしい思いがした。ロマサガ2の皇帝は軍師か海賊の2択だったし、ロマサガ3では必ずエレンに斧を持たせていた。高速ナブラ。モーションもかっこいいし何より抜群のネーミングセンスだよな。と思ってサイトを覗いてみたら由来はサガフロンティアだったらしい。時代の流れを感じた。

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#12 三軒先の如月さん(白雪さん)
オチのつけ方が唐突で、この前の掲示板の流れからいくとみんなから怒られそうだと思った。『予想では、如月さんは喜んでくれている』のあとに『だって、ほら、今にもちぎれそうなほど尻尾を振ってる』とか付け足してオチってのじゃダメだったのかな。別に読者としては主人公が好きなのが人間だろうが犬だろうがイグアナだろうが何だっていいので、そもそも驚くようなオチではなかったと思う。うどんが好きという情報もほとんど意味なかったな。犬のくせに猫舌で、冷めてのびきった麺をうまそうにガツガツ食ってる描写とかがあってもよかった。
瞳の描写が何度も出てきてもったいないと思った。好きになった理由って、このお話のかなり重要な部分なので、そこに力を集中させた方がよかったと思う。

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#13 バドミントン(灰人さん)
途中までいいなあと思って読んでいたのだけれど、丘の土の下に死体がというところで冷めてしまった。無い方が良かったと思う。「影がたったひとりでいる」と書くだけで、持ち主がどこか遠くにいってしまったか、いなくなってしまったと想像できる。あるいは、そう想像させるような作りにしたらよかったと思う。それ以外の部分は素敵だった。
同じ影についての話でも僕が書いたものと全く違うなと思った。動きがあっていい。僕は動きを書くことができない。

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#14 暑寒(川野佑己さん)
こういう小説の醍醐味はやはり作者自身も「嘘くせー」と思いながら書いているってことだろうな。嘘くさいけど別にそれはどうでもいい。正しい知識なんてどうでもいい。浦和からシベリアに至る論理の飛躍が旅なのだ。小説旅。語呂悪いな。だいたいこういう話を書くと、あらのさんみたいに思考の奥へ奥へと妄想の彼方へ飛んでいってしまうのだが、ラストの『語彙を増やすためと避暑とを兼ねて、いつかはここを訪れたい』と現実に引き戻されるのがぴりっと引き締まってよい。「それにしても暑いなあシベリアでカキ氷でも食べたいなあ」と考えていてこの話を思いついたのだとしたら面白いが、むしろそう思わせるのが文章力なのだと思った。

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#15 ガラスの瞳(fengshuangさん)
『物心がついたとき。記憶の始まりは額にキスされた瞬間からだ』かっこいい。こんなキザな台詞をさらっと言えるようになりたい。ただ、冒頭に出てくる『彼女』というのが誰だかわからず悔しい。誰だ! テディベアの作者かな。
難しいと言えば、家族ができたら連れていくことは決めていたのに、子供に渡すかどうかは迷っているという心理も難しいと思った。家族云々に関わらず傍らに置いておく、あるいは、子供ができたら渡すつもりだ、というのならわかりやすかったのだけれど。
最後の台詞は唐突すぎるように思った。何故『私はまだ共に彼といたい』と思ったのか。そう思う必然性が感じられなかった。それまで中立的な目線で語っていたのが最後に感情を吐露するというのはとても効果的であるけれど、「効果的である」ということしか感じなかった。

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#16 花の卵(朝野十字さん)
これを読んで、小学生の時に読んだ漫画のことを思い出した。すごーく簡単に言っちゃうと、「周りのみんなが宇宙人に体を乗っ取られた! この街にはもう僕しか地球人はいないんだ! と思ったら僕こそが宇宙人だった」という話だった。幼心にあれは衝撃的だったなあ。
『花の卵』という語感は良かったけれど、ストーリーも演出もいつかどこかで見たような感じだった。というか、この場面はきっと誰が書いても似たようなものになってしまうんじゃないかと思った。

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#17 彼と私の話法(わたなべ かおるさん)
暗闇の中虚ろな目で座り込んでる彼氏KOEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!!!!!!!!!!!111 元気っぽく振る舞う女の子と、キザで傷つきやすい男の子。典型的な少女漫画の構図っぽい。
『他に、わかる人がいるなら、私よりわかる人がこの世にいてくれるなら、喜んで見送る』という台詞は、この通りの意味だとしたら気持ち悪い。ほんとに別れたら泣いて後悔するくせに。そうじゃなくて、これがもし『他に、わかる人がいるなら、私よりわかる人がこの世にいてくれるなら、喜んで見送る』(けど、私より彼のことをわかる人なんているわけ無いから、ぜったいに別れない!)という意味だとしたら、そっちの方が可愛らしくていいと思った。
『君の優しさを伝えられないことがもどかしい』ってのは、この恋人の優しさをうまくお話にできないって意味だろうけど、この女って言うほど優しいのかと思った。落ち込んでる人にごはんを強要することが優しさだろうか。このふたりは一度しっかり話し合ったりした方がよさそうだなあと他人ごとのように思った。というか他人だ。

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#18 美術館でのすごしかた(qbcさん)
露西亜人』とか『独逸人』て書くと一昔前の純文学っぽい。けど、語り口がやけに軽妙で、そこだけちょっとギャップがある。でも逆にロシア人・ドイツ人と書いたとしても浮いてしまうような気もする。ほんとに変な文体だ。真面目かと思えばさらりとかわす。そのくせ、全体に漂う狙いすました感じがすごい。
美術館て、ほんとに数えるくらいしか行ったことない。僕は気に入った絵だけずっと眺めていたいのだけれど、誰かと一緒だとある程度歩調を合わせなきゃいけないし、ひとりで行くほど絵が好きでもないからだ。なによりあの雰囲気が嫌だ。もっと気楽に楽しみたい。カレーパンだって食べたい。美人のお姉さんに口元を指で拭われたい。美術館を出たあとの飲み屋で美術談義に花が咲いて、酔った勢いで適当に言った批評が美人のお姉さんにめちゃめちゃ気に入られて「そうよ、それが本質よ!」とか言われてそのままお持ち帰りされたい(「見て……これがあたしの本質よ」の展開)。
こうやって書いてみると、この登場人物たちってけっこう動かしやすいんだなと思った。

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#19 水晶振動子(るるるぶ☆どっぐちゃんさん)
ほんとにWikiPediaの文そのまんまだよ。面白いなあ。でもコピーアンドペーストしたんじゃなくてちゃんと打ち直していたりして、意外とマメだ。みんなが真面目に考えてメタとかなんとかしてるのを横目に、この人は全く自由奔放にメタの垣根を飛び越えててすごいと思う。ずるい。
以下、関係ない話。

yeah yeah yeahs - pin

yeah yeah yeahs - down boy
ヤーヤーヤーズに限らず、僕は女性ボーカルがあまり好きじゃない。たぶんキンキンした高い音が好きじゃないんだと思う。バイオリンもあまり好きじゃない。ロリ声なら好きだ。
ところで、ロックにおける女性ボーカルって「エロティックでエキセントリック」みたいに紹介されることが多いように思うが、みんながみんなそれほどエキセントリックなわけでもないと思う。ヤーヤーヤーズのボーカルの人は最初聴いたとき意外と普通だと思ったくらいだ。着てる服はエキセントリックかもしれないが、唄い方はけっこう普通だ。もっとこう、ダサくてぽっちゃりしたおばさんみたいな女性ボーカルはいないのかな。ヨラテンゴのアイラみたいな。

yo la tengo - you can have it all
ぜひこの踊りをマスターしたい。

yo la tengo - sugarcube
アイラかわいいよかわいいよアイラ。それにしてもこの動画面白いな。

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#20 ドライブ(たけやんさん)
たぶんこれは実際にひまわりが顔に見えた経験があって書いたんだろうなーと思った。でなければ、ここまで迷い無く「ひまわりが顔に見えた」なんて書けないと思う。でもこれ、ドライブしている最中にする必要あったのかな。夜道を散歩してた時のほうが見間違えやすいような気がする。それか、ドライブの途中で昼寝して起きたらいつの間にか辺りは真っ暗で、ライトをつけてみたらたくさんの顔がこっちを向いてた!とかにするとありそうな感じになる。そもそも「有り得る」話にしたかったかどうかわからないけれど、あまりにも「そうれはどうか」と思う内容だと一歩引いて見てしまう。

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#21 カメレオン(仙棠青さん)
ラストが味気なかった。たらふく文章を食ったのに、破裂したら皮しか残らないってどういうことだ。どうして膨らんでたんだ。言葉は空虚だってことなのか。あ、そういうことだったの? でも、体がびっくりするほど膨らんだら破裂するのは必然なので、それは物語的必然なので、それで最後破裂しただけで終わられても「まあそうだよね」と思うしかないです。
このカメレオンて生き物は文章を読んだら読んだだけ膨らんでしまうので野生のカメレオンはどうやって暮らしているんだろうとか思った。なんだかカメレオンかわいそうだ。別にカメレオンじゃなくたって良さそうなのに。ああカメレオン。そしてカメレオンという言葉もまた意味を消失しつつあるのだった。

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#22 オチのない話が書きたい(三浦さん)
メタ? メタっちゃメタだな。状況がよくわからなかったけど、むせてる面白さを読ませようとしているのだなと思った。涙目になってむせながらも必死になって朗読しつづけようとする面白さ。生真面目な、というか真面目腐った面白さを書かせたら三浦さんはすごいと思う。第50期『愛唱歌』(http://tanpen.jp/50/21.html)におけるウェルギリウスの変なポーズとか。
無理矢理解釈すると、このむせてるところまでが実はサゲアリスキィさんの書いたショートショートで、ラストの一文はそのショートショートを書斎で誰かが朗読してるのを煙草吸いながら聴いてるってことになりそうだけど、それはまあ別にどうでもいい感じだ。『ブルーシートがめくれていても、直す気にもならない』とか、文章そのものを楽しめればいいのだろう。

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#23 ナガレ(草歌仙米汰さん)
普通の話かと思ったら後半ですごくなった。リンチの映画みたいだと思った。『その代わりに、数十本の枯れ木が流れてきた。それらはみんな彼の顔をしていた。』という部分には、やけにメルヘンな感じのBGMが合いそうだ。とてもグロテスクだ。しかも、このあとの彫刻刀が流れてきて根をひき千切っていったという流れも面白かった。
で、この後半の流れを読んでからもう一度冒頭から読み返してみると、やはりしっくりこない。最初から異質な話にするか、または最初はあくまでも真っ当で普通な話にしてみると、コントラストでさらにすごくなりそうな気がする。

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#24 こわい話(長月夕子さん)
「ここの受付にさあ、可愛い人いるじゃん? いや、巨乳の方じゃなくて、そうそう、拒食症っぽい黒縁メガネの田中さん(仮名)。この前、勇気を振り絞って飲みに誘ったんだけどさ、うん、俺だってやる時はやるよ。でさ、途中まですっごい良い雰囲気だったわけ。でもね、田中さん、突然『トイレの話をするわね』って話し始めたんだ。一体何が始まったんだろう、と思いながら聞いてたんだけど、どうやらトイレにまつわる笑い話みたいだったんだ。だから、愛想笑いのひとつでも挟もうかと思って、タイミングを伺うために田中さんの目を覗き込んでみたら……俺は凍りついたよ。目が超マジだったんだ。『それ、もしかして怖い話ですか』って訊いてみたら何か知らないけど怒られたよ。俺、焦っちゃってさ、『怖いですね〜』とか言ってみたんだけど、田中さんそれを無視してまだぶつぶつ言ってるんだよ。すげーこわかった」
たぶん話を聞いてた人はこんな感じだと思う。

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#25 ぷらなリズム(とむOKさん)
プラナリア! 生物学部の彼女が目を輝かせて「プラナリア切ったら分裂した!」とはしゃいでたのを思い出す。
全体的に面白かった。特に『シュレッダーが、無闇に元気なんだよ』という台詞とか、元気なものを見るとよけい気分が後ろ向きになってしまう感じとか、ほんわかした笑い話で良いなあと思った。ぷらなりあでググってみたり、2ちゃん(みたいなもの)に書き込んでみたりするのも、「ひきこもりニート」を想定したキャラに合っていたと思う。まあでもこの掲示板の書き込みの描写はなくてもよかった。その後の展開に活かされるというわけでもなかったので。

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#26 お別れのキスのことばかり考えていた(最中さん)
今期、最も「してやられた」と思った作品。表現がいちいち素敵だ。「キス」とか書いてあるのを読むと恥ずかしくなるのだけれど、実際恥ずかしかったけれど、こういう落ち着いた甘さが出せるのはすごいなあと思った。そこによくわからないウサギのグロテスクな妄想が入り込んできて、お腹いっぱいって感じだ。

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#27 にらめっこ開始(モーレツハンニャシール15枚さん)
観客のひとが突然解説をはじめるというのはやはり面白い。何度見ても笑ってしまう。欲を言えば、変な名前の技紹介とかして欲しかった。「げえーッ、これはまさか〜〜〜」とか言って。
わざわざ角砂糖をいくつ入れるか書いておいてくれるなんてサービス精神旺盛だ、と思ったが、逆に書いてなかったら意味がわからなかったかもしれない。あと、最後の『ポーカーフェイスが破壊される』というのはもっと別の言い方が無かったのかなと思った。だんだんハンニャさんに要求するハードルが高くなってきた。