第44期全感想

ネタバレ、というわけではないですが、その作品を引用したりしてるので、一度作品を読んでから見てください。


#1 de-bu to-be(竹さん)
何となくですが、直感的に「作者は主婦に違いない」と思いました。根拠はありません。
「ぶーやん」「おかわりは大好き」「赤と白のシマシマ」などはとても可愛らしい表現だと思いました。
最後の突き抜けたスッキリ感も、「ぶーやんやったね!」という感じで良かったです。
結局飛び越えられなかったような気もしますが。


#2 休日(鈴木 真理子さん)
無理矢理主人公の名前を出さなくてもいいと思うので、一人称に統一してもよかったんじゃないでしょうか。
ところどころに半角スペースが挟まれているのが、ファミコンRPGを思い出してしまいました。
「ざんねん! わたしの ぼうけんは これで おわってしまった!」みたいな。


#3 発明品ナンバー21(笹帽子さん)
オチがわかりませんでした。おで、ばかだから……
2度目は「さらに」、三度目は「もっと」になってるところがポイントだとは思うんですが。うーん。


#4 ドラム缶(あきのこさん)
「結局、テツは煙草を吸うからライターを持っていたのかどうか」、と思いましたが、思い出してみたら小学生ってそういうイリーガルなものを意味も無く持ちたがりますよね。誰を刺すわけでもないのにバタフライナイフ持ってたり。
「ドラム缶の先は……だった」というのは、アイデアの端くれというか、物語のきっかけにすぎないので、それをどう広げるかが重要だと思います。


#5 かくしごと(清藤 美佐さん)
車の中で蒸発させる、という表現はいいなあと思いましたが、その後に窓を開けないと車内に篭っちゃいそうな気がしました。


#6 ソレデハ、ミナサン…(八海宵一さん)
ロボット離れした滑らかな動きと裏腹に、ステレオタイプなロボットボイスで喋るところを想像すると面白かったです。
三三七拍子って、手の平が痛くなるので代わりにやってくれると助かります。やる機会なんて滅多にないけど。


#7 ほくろ(りうめいさん)
乳房から唇に至る経路を想って悶々としています。
こういう、誰かを害するわけでなく、かと言って得になるわけでもない不思議な話は好きです。


#8 そこにあるもの(公文力さん)
最後、もう少しタネ明かししてくれてもいいんじゃないか、読者の好奇心を煽るだけ煽っておいてそりゃないぜ、ケチンボ!と思いました。良い意味で。


#9 辛苦(ARIさん)
「縋る」が何て読むのかわかりませんでした。おで、ばかだから……
15歳がセブンスター吸ったり酒飲んだりしちゃダメ絶対!
二人は死のうと思ったけどやめたのかと思ったら腕は紅いし(リストカット?)、結局どうなったんでしょうか。
と言いつつも、物語を持たない登場人物の生死にはあまり興味ありません。


#10 『定員オーバー』(橘内 潤さん)
戸辺さんがとても良い味出してます。
次の日も何事も無かったかのように出勤して欲しかったなあ。
実際に南波さんと同じ目に合ったら、二度とエレベーターに乗れなくなりそうです。


#11 何もない舞台(三浦さん)
舞台の上で男と女と犬がどのような動きをするか、ありありと思い描くことができました。
が、それが何を意味するのか(あるいはしないのか)はわかりませんでした。おで、ばかだから……
アングラ演劇サークルとかがやりそうな感じ。


#12 池袋ブルース(朝野十字さん)
朝野さんのこれまで作風から、洗井君は本当に惑星オルドンに居るのかと最初思ってしまいましたが、そうきたかーという感じです。
同じ職場にこんな面白い人がいたらいいなあ。


#13 熱(西直さん)
グロテスクだけど、それだけじゃなくてどこか懐かしいような温かいような夢の描写が素敵すぎます。


#14 一度はみんな考える(あらかき いち子さん)
一度はみんな自殺についての話を書きたがる。
死ぬのがなんだか怖いという感情は、非常に人間らしくてその通りだなと思いました。


#15 バラ4輪(しなのさん)
由紀が大声で叫んだ以降がよくわかりませんでした。おで、ばかだから……


#16 花霞(真央りりこさん)
蜥蜴のしっぽが空の比喩、というのがあまりしっくりきませんでした。
これを読んで、晴天よりも曇ってる方が花は映えるのかなあと思いました。花が咲いたら気を付けて見てみたいと思います。


#17 蚊の飛翔(藤水木さん)
メタ的な話になっちゃいますが、「僕」を教室から出すためにこのようなキャラクターになってしまった及川君を不憫に思いました。


#18 愛せない者は愛されない浜辺(qbcさん)
「母さんに運転していただき」というところに違和感を感じました。別に謙譲語使う必要がないような。
海を見ているといろいろな言葉が浮かんでくるのはそういう理由だったんですね。


#19 お裁縫(わらさん)
青春時代を思い出してセンチメンタルな気分になりました。
あれ、でも家庭科の授業ってことは小学生なのか。小学生なのに彼氏彼女の事情なのか。いいなあ。
がんばれ徹!(感情的な文章の時は作品を楽しんだということです)


#20 ナオキ君(海坂他人さん)
妹が庭のバケツにおしっこした、なんて聞いたら前のめりになって話の続きを催促するわけないです。
嘘をつくのは難しいです。


#21 波紋(宇加谷 研一郎さん)
腹話術の練習って舌噛んだりするんですね。未だにどうやって口を閉じながら声を出すのかさっぱりわかりません。
兎のぬいぐるみににゃん太郎と名付けるセンスは好きです。


#22 積み荷のない船(戸川皆既さん)
一年に一回しか本土に船は出ないなら手紙はいつ出されたものなのか、唯一の産業の漁業が廃れたら島はどうなってしまうのか、など、どうでもいいようなことが気になってしまいました。
あまりにもヒントが少なくて、敏幸がどこへ何をしに行くのかわかりにくかったですが、本土行きの船が出る港ではなく漁港から出航することと、島のためになるようなことをしに行くらしいということから、密漁か何かかなあと勝手に考えてみましたが、そもそも答えはあるのでしょうか。
ただ単に「大変な仕事をしに行く友人を見送る話」として読むべきなのかなあ。だとすると、第42期の『物語のディスクール』と同じ構造になるのでしょうか。


#23 虚空(ぼんよりさん)
ハリウッド製のくだらないB級映画が大好きです。自称銀幕スターの台詞からB級の匂いがプンプン漂ってきますが、スクリーンに火をつけてグラサンマッチョの黒人に追いかけられるのもB級臭がプンプンです。僕はB級映画が大好きです。


#24 恐怖(負け犬さん)
最後の台詞は、なるほど確かにトイレットペーパーを三角に折りそうな礼儀正しさがありますね。
「冷たいな! マグナムドライだな!!」は使って行きたいと思います。


#25 パラボラアップル(るるるぶ☆どっぐちゃんさん)
詩的でかっこよくて美しいです。


#26 香辛料(壱倉さん)
三つの香辛料を教えていただきたいです。
いやでもカレー弁当は無理があるような気がします。


#27 バスケット・クソ度胸ボール(ハンニャさん)
「一歩間違えればはさまれるけど、バスケしようぜ!」がツボでした。
すごく面白かったです。


#28 劇場(曠野反次郎さん)
あまりのいかがわしさと胡散臭さに読んでいて興奮しました。
「私」が何に気付いたかは作者自身も考えていないんだろうなあと思いました。


#29 トーストとトマト(冬口漱流さん)
「トコ」という名前は絶妙だと思いました。すごく存在感があるのに、本当はどこにも居ないような感じがします。