第48期短編感想

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毎回、偉そうな感想書いてます。でも、僕の感想が正しいなんて思っていません。人が違えば、読み方も違うし、作者からしたらまた違ったことを考えて書いたのだと思うし。なので、別にこういう読み方をしろと強要するつもりもありません。ただ、こういうふうに感じたのでそのまま書いています。


#1 ある哲学者の余生(梗介さん)
ついこの前、暑いのでベランダに逃げて思索に耽っていると飲み物を落としてしまった、という話を書いたところだったのでびっくりしました。(→http://tl-rah.velvet.jp/?p=71
球場の観客たちを理解できず嫌悪するというのは、世界を定義するのが仕事の哲学者らしくない行為であるように思えます。
グラスの破片=無=死であるために人間の例にならって土に埋めるというくだりは好きです。グラスの破片が「意味」である、というのは納得できませんが。


#2 都内のうんこ(qbcさん)
同じうんこの話なんですが、曠野さんはぐねぐねと曲がりくねった文体であるのに対し、直線的ですっきりしていると思いました。下痢便と健康なバナナ便の違いみたいな。


#3 空き缶に満たされる君への想い(てふてふさん)
女が死んでしまうことを知っているのに、死についてクイズを出して自分の方が先に泣いて甘えちゃうところとか、タバコの入った雨水を飲もうとしちゃう(もしかしたら死のうとして)ところとか、それを叱ってくれた女性に運命を感じちゃうところとか、気取ろうとして不恰好なダメ男っぷりがものすごいです。


#4 魔法の言葉(りうめいさん)
「オジチャン、ヨーイクシちょうだい!」なんて面と向かって言われたら立ち直れないですね。


#5 TimeLine(烏賊章魚さん)
汗はかかないんでしょうか。
一日中走っても、一日の終わりに充足感を得られずに、それでも走り続けるようなひたむきさを僕にもください。


#6 ファニーゲーム(公文力さん)
冒頭部分がすごく好きです。ゲームの内容よりも登場人物がファニー。


#7 葬送(藤田揺転さん)
ゴスロリゴスロリ
そのジャケットのCDはあまり太陽に似つかわしくないと思いました。


#8 ワクワクワールド(しけたおつまみさん)
第3セクターっぽい。「ワクワクワールド」という名前とか、小動物の種類とか、隣にゴルフ場とか、こういうところいっぱいありそうだなあ。で、すごく切ない。


#9 青春(奥村 修二さん)
昔は、ラグビーやって、勉強はあんまりやらなくて、飯をいっぱい食べて、失恋して、親の目を盗んでバイトした金でバイク乗って、夏休み明けにヤンキーが孕んで堕胎のためのカンパを集めて、みたいのが青春だったと思うんですが、今の青春は複雑ですね。死にたいときに誰かが殺してくれると思ったら大間違いだと思う。


#10 ハーフムーンスライディングアタック(キリハラさん)
素晴らしい! これだよこれ!
冷静で解析的な落下の描写なんだけど、だからと言って冷めているかというとそうでもなく、最後までドキドキしました。なによりラストがいいなあ、いい。


#11 エスパーモノローグ(笹帽子さん)
この主人公の言葉どおりにも読めるし、ものすごい力技の言い訳であるとも読めて面白い。文章に無駄がないですね。


#12 擬装☆少女 千字一時物語3(黒田皐月さん)
妖怪ってそういうものなのでしょうか。これだと、女装がなにか人ならざるよからぬものであるようにも読めてしまうので、魔法使いとかにしておいてもよかったかなあと思います。
少年に説得されて女装を続けるくだりが一番面白いところじゃないかと思うので、もう少しそこを広げて欲しかったです。
これまでの3作品、どれも女装時の服装に関する記述が一番気合入ってるなあと思いました。


#13 白い家から真っ赤なボートを見た(三浦さん)
こういう笑わせ方ができる人はすごいと思います。ふたりのやりとりが面白過ぎる。


#14 なるさわみなみというヒト(心水 遼さん)
見返りなんていらないって言うなら、淋しいときなんて無いですよ。相手の笑顔って思いっきり見返りじゃないですか。これ以上話すと自分のことになりそうなのでやめときます。


#15 あたためますか?(ゆたかめさん)
あたためますか?=生まれ変わりますか?、かなあ。むずかしいです。


#16 象(exexebさん)
ふと「あ、タバコ吸おう」と思ったときにライターがないことに気付いたときの絶望感には共感できます。
無意味を追い払うために穴を掘るという無意味さがたまらなくかっこいいです。
僕は「ダニー・ゴー」を聴くと散歩に行きたくなります。


#17 シンポジウム(小谷さん)
悪魔の立場がいまいちわからず。外野で野次を飛ばす人かな。


#18 墓標(qbcさん)
無機質なビルは確かに墓標を連想させますね。それは、直接、そのビルで人が死んでいなくてもそうです。


#19 電話(青いブリンクさん)
乾いた狂気。マザー(糸井重里の)のパパからの電話を彷彿とさせる面白さがあると思いました。


#20 クロメル・アルメル((あ)さん)
どこかとぼけた感じのお笑い志望のふたりと、現実主義な主人公の対比が面白い。
「サーモカップル!」のときのポーズが、狙ってるのだろうけれど、すっごいさむいです。
でもこれって、三人で漫才やってるように見えるのかなあ。


#21 咲く手(宇枝さん)
「手が咲いている」という点は確かに異常だけれど、手がだんだん枯れていくところは、まあそうだろうな、という感じでそのままでした。
最後の投げっぱなしのラストは伊藤潤二お家芸ですね。こうするのなら、やはりもうひとつくらい盛り上がりを作ってほしかったです。


#22 足を揉む(宇加谷 研一郎さん)
仕事中は一切喋らないというのがいいです。
非日常を描くのではなくて、あくまで日常の風景なんだけど、毎日の繰り返しの中のちょっとした窪みをうまくひっかけてるなあと思いました。


#23 道理が一つ。無理が二つ。(振子時計さん)
物語の構成は面白いと思います。なるほどーって。


#24 河童の顔(藤舟さん)
別に弟を殺さなくてもよかったような。足をつかむ弟の手をふりはらって自分だけ助かったことについて主人公はどう思っているのだろうか。


#25 川辺(ぼんよりさん)
目の下にクマができているところから、なにか背景があるのかなあと思わせる。
「おじいさんと犬なら、朝散歩すればいいのにと思う」というのはその通りだと思いました。


#26 レモン(るるるぶ☆どっぐちゃんさん)
レモンと人形を交換すればいいんじゃないかと思いました。


#27 またもやうんこの話(曠野反次郎さん)
毎回毎回、うんこの話でよくここまで書けるなあと、あらのさんはうんこ大好きなんだなあと思いました。


#28 愉快なメタルフレーム(ハンニャさん)
青春だ! ラストの一文が切なくてかっこいい。